第04話

CHAPTER-04 「納得いかない!?休日の戦い」


「今よユウちゃん!」


景の指示で、タイミングを計った裕司・・「ブルーナイト」が「異形」に飛びかかる

両腕を振るい、変形させた腕部パーツに力が集中する


「うおぉぉぉぉっ!!!!」


直撃、腹部の辺りから潰れていく異形・・・


・・ぉぉぉ・・・・


・・「異形」・・そう呼称されるようになった「怪物」は完全に崩れ去り、ブルーナイトは裕司の姿に戻る・・

またしても、無傷の勝利をおさめていた


「ユウちゃん、連戦連勝ね♪」


駆け寄る景・・だが、裕司の顔はいつもと違い・・

すっかりやつれて、疲れきった顔だった


「・・ねぇ景・・僕何回戦ったのかわかる?」

「あたしを助けてくれた時から数えてェ・・もう24回くらいよ?」

「・・・いい加減に疲れた・・・」


裕司はぱた、とそこに倒れてしまい・・ぜいぜいと息を荒げている


「・・連戦はお疲れよね・・」


ここのトコ一週間に9戦、今日だけで3連戦だったのだ。

いかに強い騎士になれるとはいえ、中身は普通の中学生

しかも裕司はケンカが強いワリには体力が「普通より下くらい」しかなく、マラソン大会などになるといつも後ろを走っていた


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ところで、これまでの所ブルーナイトについて分かった事は・・


「1.変身する時には周囲の壁とか建造物が削りとられるようにして吸収される」

・・粉のように分解され、裕司の身体と融合して変身するらしい。


「2.変身の時に分解されたものは、元に戻ると一緒に元通りになる」

一瞬にして復元され、まったく何もなかったように・・


「3.変身するととにかく疲れがたまる」

当初はそうでもなかったが、段々たまってきているらしい

最近は一時的にふらっ・・ときたあと、次の日くらいから一気に眠気などの諸症状がでるようになった


「4.最近変化してきている」

先ほどのように腕や脚部パーツの変形といった特殊な攻撃方法がとれるようになった


・・結局核心を突くようなデータは今のところ得られていない

ただひたすらに異形と遭遇すると戦闘形態になり、戦ってしまうという本能にも似た衝動・・

それが今のブルーナイトの実体だった


・・まぁ、「怪物に人が襲われた」というニュースが流れていないのは救いなのだろうが

多分裕司が異形を駆逐しているおかげで、街の人々に危害が及んでいない・・と考えるべきだろう

あるいは、裕司達が集中的に狙われているのか?

・・小難しい中間報告はここまでにして、本編に戻ってみよう↓


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「というワケで今日はゆっくりしてね♪」

「・・って・・ここ、ただのファミレスじゃん・・」

「気にするなよ、たまにはゆっくりこーゆートコですごそうぜ・・」


景はにこにこ、忍はすっかりくつろぎ顔・・・

ここは六澄・・景の家から少し行ったトコ、広い通りの有名なファミレス

もちろん美味しいという事も有名な理由なんだけど、一番に来るのは多分・・

ウェイトレスさんの制服目当てなんだろうねぇ・・・(汗)

「お・・・先輩!」

「・・先輩?」


僕は忍が右手を「すちゃっ」と上げて挨拶した方を見る

ミニスカートのエプロンドレスを着た、大きなリボンの女の子がこっちを向いて笑った


「忍く~ん・・また来てくれたんだぁ♪」

「コンビニで食うよか、よっぽど安上がりだから・・第一うまけりゃそれでいいんスよ」


近づいて来たその人は忍と親しいらしく、えらい楽しそうに話している


「この子が裕司くん、でこっちが景ちゃん・・」

「は、初めまして・・」


景と僕はちょっとおどおどしながら挨拶する

その娘は背もさほど高くなく、同い年と言えば納得しそうな勢い・・


「この人はルインさん・・ウチのガッコの3-7だ」

「え?・・・中学生・・・」

「大丈夫、バイトなら許可取ってあるんですぅ。」


それ以前に気になったのは彼女の名前・・

・・ウチの学校も随分国際化してるんだなぁ・・

・・チェスさんみたいに知り合いにも何人かいるけど、それでも外人さんの割合が結構多いよね~・・


「多少サービスしときますから、ゆっくりしてってくださいねぇ。」

「感謝ッス、先輩♪」


忍は嬉しそうに笑い、ルインさんはそのままレジの方へ行ってしまった


「うにゃぁぁぁぁっ!?!?」


・・と思ったら、思いっきり「どべっ」と転んでいた


忍は汗をたらしながら解説する


「・・まぁ、あーいう風にドジっ気多い人なんだけどなぁ。」


僕と景も苦笑い・・


「大丈夫、ルイン?」

「ええ~・・いつも通りだから痛くないですぅ」


・・イヤ、頭が大丈夫か、あんたは・・


彼女を助け起こした同僚も、そーいう彼女のドジぶりには呆れている様子・・


「ま、とりあえずぱーっとやろうぜ♪」

「そ、そうだね・・」

「何でも注文してくれていいわよ、あたしのオゴリだから♪」


・・その言葉に目を輝かせたのは僕ではなく、忍だったりする。

どういう生活してるかがわからないんだから、忍の場合はいつも何を食べているのか気になる・・(汗)


そういうワケでブルーナイト・・僕の「慰労会」が始まったんだけど・・・

まさか、あんなとんでもない事が起きるなんて・・思ってもみなかったんだ、このときは。


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それから数分・・・


「おーい、来たよ忍~♪」


明が、何人かを連れてやってきた

何人かというのは、まずチェスさんと・・


「あ、メイちゃんに小麦ちゃんに・・大介・・って大介ぇっ!?


僕は明と女の子三人・・彼らを放っておいて、後ろにいた懐かしい人物に向かって叫んでいた


「久しぶりだな、裕司!」

「だ、大介・・君たしかヨーロッパ遠征に行くとかって一ヶ月前に・・!?」

「飽きたから帰ってきたんだよ、やっぱフランス語とか英語わかんねーからなぁ。」


後ろで長い髪を縛った少年・・忍みたいにちょっと服装がラフなトコから、彼がどーいう性格かは分かるはず・・

大介と僕は思わず、立ち上がって話を始めていた


「通訳ナシで一ヶ月生活すんのはしんどかったぜ~・・・」

「よく生きてたねぇ・・・」

「まぁ、その気になれば人間どこでも生きられるだろ」


※ちなみに彼の両親は今香港にいるため、彼は事実上一人で世界旅行に出かけたりしている

資金は現地で色々やって稼いでいるそうだ・・。


「ユージぃ~♪」


ぼふっ・・


・・大介と話をしている所に、メイちゃんが突然飛びついてきて・・


「んがっ!?」


どさっ・・と押し倒されてしまった

彼女は長い緑色の髪に水色の瞳・・僕の友達の中では最初に知り合った外人さん。

クラスは1組で違うけど、僕らとはよく一緒に遊んだりしている


・・ただ・・なんていうかね・・頭ン中がお子様思考なんだよね~・・(汗)


「みんなでゴハンって言ってたから来たんだ♪」

「・・みんなに会いに来たのがメインじゃなくて、ゴハンがメインって事ね・・」

「ふぇ?」


メイちゃんは景の家にホームステイしているので、よく帰りが一緒になったりもする

ある日ふらっと転校してきた、やたら元気な女の子・・・


・・っていうか、どいてよっ!!・・息ができないっ・・・・・


「いつまでおいしい目にあってるんだ、裕司?」


忍が笑う

だから、どう見ても僕が下敷きにされてるだけだろーがっ!!


・・まぁ、思いっきり目の前にメイちゃんの胸があったりするけど・・(汗)


「裕司・・顔赤いけど大丈夫?」


だぁぁっ!!!明、頼むからそれは指摘しないでくれぇっ!!


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・・というわけでメンバーが結構増え、料理も出てきた所で食事の時間となった。


「そうだ・・俺さ、昨日小麦と一緒に新しいネタ考えてきたんだ♪」

「・・・・」


小麦ちゃんと明が席を立った

彼女はウチのクラスなんだけど物静かで、いまいち存在感がないと言われている

そんな彼女の特技は・・今からやる「芸」だ。


そーいう芸が出るというのに、何故か盛り上がらない一同。

・・その理由はこう。


「・・で、隣に越してきたお兄さんってのが楽しい人なんだよね♪」

「・・・・」

「なんでやねんっ!!」

「・・・・・」

「そうそう・・ってだから、それは俺のパートじゃないだろー!!」

「・・・・・・・・」

「うん、まぁそうだね・・」

「・・・・・」

「・・はい、ありがとーございましたー♪」


・・一同、冷めた拍手。


※説明しよう!今の一連の会話は「漫才」である!

明は合いの手を入れているのだが、小麦・・彼女の声は普通の人間が補聴器のレベルを最大にしてようやく聞こえるくらいの音量なのだ!

つまり・・「一般の人には聞こえない声」で喋っているのだ!!


(明ってさぁ、何で小麦ちゃんの声聞こえるのかねぇ・・?)

(結構ヘンなトコある奴だからな・・スナイパーだからだろ?)

(・・そんなモンかなぁ・・(汗)


僕と忍がそんな会話をしていると、満足そうな明と少しだけ口元が笑っている小麦ちゃんが席に戻る


「た、楽しかったよ・・」

「そう?・・じゃあ次もネタがんばろうないとね、小麦♪」


こくん、と頷く小麦ちゃん。


メイちゃんだけが、「面白かったねー♪」と楽しそうに彼らと話していた

チェスさんですら、なんだかうかない顔になっている


(・・久しぶりに聞くが・・こいつらの漫才って変わらないな・・)

(・・面白いのかもしれないけどさ、声聞こえない事には全く意味ないよね・・漫才って)


僕と大介はひそひそと話をし、横では忍がうんうん、と頷いている


・・なんだか、疲れてきたような気がする・・


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・・三十分後・・

みんな揃って一杯やりながら(お酒じゃないよ)楽しく王様ゲーム(定番)をしていた


「王様だーれだ?」

「はい!」


明が手を挙げた


「じゃあ3番が4番に「反省」するってのどうかな?」

「私・・4番です」

「・・・・」


無言で忍が立ち上がると、チェスさんの肩に手を置き・・・

ぺこり、とおじぎを一つ。


「・・忍、お前顔引きつってんぞ」

「何を言ってるんだ大介、ゲームだぞゲーム。楽しくや・っ・て・る・じゃ・な・い・か?」


・・イヤ、お前絶対恨みのこもった顔だぞ・・

大介は冷や汗を流しながら、席に戻る忍を見送る


・・今の所大丈夫かな、さっきから派手なの出てないし・・

(ていうか忍とかとんでもないの出しそうな人間に当たってないだけかも・・)


「王様だーれだ?」

「はーい、ボクー♪」


・・忍が舌打ちしたのを聞いたのは、僕だけだろうか

そういえばさっきから「行動する側」って忍ばっかだもんな・・・

・・・ベタベタなパターンだとしても、忍の場合かなりムカついていると思う・・

ともかく、当たったメイちゃんがゲームを発表する


「えーと・・5番が2番に・・・・」


・・あ、景が5で反応した・・でもって2では・・小麦ちゃんか。

「えっと2番の胸・・・」


ぶっ!!・・僕と忍と大介は飲んでいたコーラを吹き出してしまった

景は「えっ・・」と汗を流し、チェスさんと小麦ちゃんは無表情ながら頬が赤い


ま、まさかメイちゃんがそんなネタをっっ!?


「胸・・より大きかったら勝ち。」


がっしゃぁっ!!!


小麦ちゃん以外の全員がコケた


「あ、あのなぁメイ!!それは罰ゲームじゃなくて」

「・・ふぇ?・・・でもみんなボクよりおっきいし・・いいなぁ~と思ってたから・・」

「・・とりあえず言ったからいいだろ、さぁ・・判定は?」

「触って調・・」


ばしぃぃん!!!


言いかけた大介の頭を景のハリセン(どっから出したんだ!?)がなぎ払った


「・・・見た目判定では景だな、見たところ9・・・」


ぶわぁしぃぃぃ!!!


またしてもハリセンが唸り、忍の顔面から直撃する


「・・ったく・・この色ボケ男×2っ!!!」

「サービスしろよ、そのくらい」


ぎっ!・・・、と景がものすごい形相をしたので大介は発言を控えた


「さぁ、じゃあ次のパート行きましょうか」


景はにこにこと笑うと、そのまま何事もなかったかのように話を進めた


「王様・・」

「俺だ。」


にやぁ・・と忍の顔が笑っている


いい加減屈辱を味わった男は、もはや押さえのきかない程怪しい笑みを浮かべていた

・・復讐の鬼の顔だ、これは・・!!


「4番が・・・」


4番?・・・誰だろう・・

・・って僕じゃんっっ!?


がたがたと震えながら忍の顔を見ると、「お前かぁ・・」といっそう怪しい笑みになる


「4番が・・・・」


な、なんなんだよっ!誰に何をしろってんだよっ!?


「4番がルインさんのスカートをめくる。」

「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!!」


「・・お前か、裕司・・」

「忍くん、それは犯罪・・」

「うるさいなぁ・・これは「罰ゲーム」だぞ?・・・ゲームだからやるよな、裕司?・・今更やらないなんてのは・・」

「う・・ううぅ・・・(汗)」


僕は思った

・・あれ、慰労会って何の話だったっけ・・・

というより、気の早い僕はもう走馬燈らしきものが見えていた。


・・ああ、そうか・・ここで人生終わるのか・・

「それ行ってこい裕司!!」


忍は非常に楽しそうな、晴れやかな顔で僕を押し出した

・・どうする、逃げるか!?


「・・逃げたらお前の秘密をバラすぞ」


ぴく、と僕の身体が硬直した


秘密ってまさか・・ブルーのこと言ってるの!?

そんなことがバレたら、今度は秘密組織としてのA.R.Kがお気に入りの景に殺される~!!!

(というよりは、彼女の家の力で合法的に消される恐れが・・)


・・道は一つしかないのか・・


意を決して、僕は席を立った

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裕司が席を立ってすぐに、忍はつぶやいた


「・・そう、あの人に挑戦した奴は数知れず・・しかしいずれの者も無事に帰っては来ない・・」

「彼女はそれほどの手練れなのですか、忍さん?」


チェスが不思議そうに聞くと、忍は遠い目で言った


「俺も同じような状況でトライする羽目になったんだが・・スカートを掴んだ瞬間から記憶がなかったんだよ」

「・・お前の知り合いは王様ゲームでそういうネタしかやらないのか」


忍はその突っ込みを回避して続ける


「次に目が覚めた時、俺は・・俺は・・・・・」


忍はそこまで言ってがたがたと震えだした

・・あの忍がここまで青くなるとは、一体!?・・


「つーかユウちゃんをそんな危ない敵に立ち向かわせたの!?」

「・・いや、あいつならひょっとして・・と思ってな・・」

「・・・・・できるかーっ!!!!!」


すぱんっ!・・と景のハリセンが唸りを上げていた。


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・・翌日からしばらく裕司は姿を見せなかった。

異形以上の敵・・最強のウェイトレスと相対したとき、彼は為す術もなかったそうな・・・。


鈴宮裕司・享年13才・・


「殺すなよ~!!」


慰労会という名を借りた忍の罠・・


・・結局裕司は、休む事などできなかった

それどころかとんでもない敵と関わる事になってしまったのである。


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